トールサイズ女子の恋【改稿】
 それに最初は身長コンプレックスがあって隣に並んで歩くことに戸惑いを感じていたけれど、今はそんなに気にしないでいられているのが不思議で、恋ってすごいなぁ。

「そういえば、YUKIが美空に会いたがってるよ」
「YUKIちゃんが?私も妹がいたらなぁと思っていたので、是非お会いしたいです!」
「実家に帰った時にYUKIに美空のことを話したら、『お姉ちゃんがずっと欲しかったから、会いたい!』だって。兄としては、『お姉ちゃんがずっと欲しかった』は寂しく感じたな」
「そこは…、まぁ…」

 最初はYUKIが幸雄さんの妹だとは知らずに勝手に彼女と誤解して、幸雄さんともぎくしゃくしちゃった時期もあったのは遠い出来事で、誤解が解けて良かった。

 私たちはカレー屋さんに行く前に靴屋さんの前を通ると、並べてある靴の中にあのヒールの高いブーツがあったので足を止めた。

「どうしたの?」
「このブーツ…、買うか買わないかずっと迷っているんです。履くと身長が更に高くなるんで、踏ん切りがつかないというか……」
「そうなんだ。どんな風になるか試しに履いてみせて?」
「はい…」

 私は店員さんに声をかけて試し履きをすると、視線の高さが増して幸雄さんとの距離がまた広がっちゃう……、幸雄さんは私をかなり見上げてるしこのブーツを買うのはよそう。

「やっぱり背が高くなるから、やめます」
「いいじゃん、似合ってるよ。すいません、このままお会計してもいいですか?」
「かしこまりました、此方へ」
「えっ?!私が払いますよ!!」
「プレゼントさせて?初デートだから」
「……」

 そんな言い方はズルイ……と心の中で呟いて、当の幸雄さんはスタスタとレジに向かってお会計を済ませ、今まで履いていたヒールの低い靴を脱いで靴屋さんの袋に入れてもらい、私は人生で初めてヒールの高い靴を手に入れた。
< 161 / 162 >

この作品をシェア

pagetop