トールサイズ女子の恋【改稿】
 私はご飯を食べ終えてスペード街をぶらぶらとしていたら、靴を販売しているお店を見つけ、沢山の靴が並べられている中にヒールの高いブーツがある。

 色はベージュで踵の部分にリボンがポイントとなっていて、どんな服にもあわせられそうかもと試しに履いてみると、身長が数センチ程高くなった。

 身長が高いせいでお洒落な靴なんて履けないし、今履いている靴だって低いものだし。

「お似合いですよ」
「そう、ですかね」

 お店の人は営業トークとしてお世辞を言うけれど、これ以上自分の身長が高く見えるのは嫌ですぐヒールの高いブーツを脱いで、自分の靴を履いてお店を出た。

「今度は、いつ会える?」
「そうだなぁ、週末の日曜かな。映画でも観に行くか?」
「行きたい!」

 私の前を歩くカップルの女性は小柄でヒールが高くて、隣に歩く男性を見上げて楽しそうに話している。

 ああ、なんて理想的な身長差なんだろうか。

 ああいう小柄な女性に産まれれば身長を理由に失恋なんかしないし、付き合ったら恋人を見上げてみたいし、お洒落な靴を履いて出かけてみたいし、身長の低い人が羨ましいよ…と下唇をキュッと噛みしめながら目の前のカップルを見つめ、とぼとぼと駅に向かう。

 気分転換のつもりでいたけれど、自己嫌悪モードで気分が台無しになっちゃった。

「帰ろう」

 K駅の改札を入って、電車が来るまでスマホでアプリして時間をつぶそうと、バックに手を入れるけど、肝心のスマホがない。

 バッグの中を漁ってみるけどスマホが見つからなくて、ご飯を食べたお店に戻ってみたらそれらしきものは無いと店員に言われた。

 思い付く所は問い合わせしたけど、どこも同じように見つからないという返事だけ。

 後は…、四つ葉出版社の総務課に忘れてきたのかな?でも総務課に落としてたら、誰かしら言ってはくれるだろうし。

「もしかして、在庫室?あそこなら落とした可能性があるかも!」

 私は急いで、藍山駅に向かう電車に乗り込んだ。
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