トールサイズ女子の恋【改稿】

　水瀬編集長に連れられてとても静かな住宅街を歩くこと数十分、こんな場所に食事をできるところがあるのかな。

「タウン情報部の姫川から教えて貰った定食屋さんなんだけど…、あっ、あれだ」
「お店の雰囲気からして、和食ぽいですね」

　私たちはお店の前に立つとお店の造りは木造で、看板は小さく掲げられていて筆字で【もりや】と書かれ、玄関のそばにある立て看板には手書きのメニュー表が貼られている。

　タウン情報部の姫川さんって、こういうお店とか詳しいんだ。

　メニュー表を見てみると品数は『鶏の唐揚げ』、『魚定食』、『本日の定食』の３つしかない。

「シンプルなメニューですね」
「そうだね、入ろうか」

　水瀬編集長が私を先に入るように玄関を横に引いてくれたんだけれど、其れだけの仕草なのに自然としていて、見た目だけじゃない中身の良さも、水瀬編集長のかっこ良さの１つかもしれない。

　私とランチで本当にいいのかなと、そんな疑問があるけど口に出したらせっかくの２人きりの雰囲気が台無しになりそうで、水瀬編集長には聞けなかった。

　【もりや】に入ると、カウンターの中に男性の店員さんが１人いる。

「へい！らっしゃい。お２人さんですか？」
「はい。四つ葉出版社の姫川がこちらの定食が美味しいって教えていただいたんです」
「姫川さんの同僚のかたですか！カウンターのお席にどうぞ」

　水瀬編集長と店員さんは挨拶をして、私たちはカウンターの席に座る。

「ご注文は決まりましたか？」
「俺は鶏の唐揚げにするけれど、星野さんは決まった？」
「魚定食にします」
「あいよー。出来るまでお待ちください」

　店員さんが冷蔵庫から食材を取り出て調理を始めると、私たちはその様子を見る。

　魚を捌くのも早いし盛り付けも丁寧で、唐揚げも鶏肉を油に入れる時にカラッと音を鳴らし、油から引き上げられた鶏肉の色も焦げ付きがちょうどよくて、出来上がるのが楽しみ。