トールサイズ女子の恋【改稿】
 三斗さんは他のお客さんのカクテルを作っていて、私たちはカクテルと軽いおつまみを頂きながら話をする。

「いつも郵便物を届ける時、編集部の皆さんはバタバタしてますよね」
「雑誌が発売されても、また次の号やその先をやらないといけないから年中忙しいね」
「あまりプライベートな時間を持てないですか?」
「そうだなぁ、纏めて休めるのは年末年始くらいかな。俺は編集長の立場だし日曜でも交流を含めて取引先の人に会ったりするからさ、あまりプライベートな休みとは言えないね」

 水瀬編集長は苦笑しながら、またカクテルを飲む。

 私は事務系だしプライベートな時間はいつでもあるけれど、編集の仕事って大変なんだなぁ。

「星野さんはさ…、同じ総務課の木村と仲が良いよね」
「えっ?」

 何でここで木村さんの名前が出てくるんだろうか、水瀬編集長はとても真面目な表情で聞いてくる。

「あー、いや、変なこと聞いてごめん」
「木村さんとは…、入社した日に総務課の仕事を教えていただいただけなので、仲が良いというか普通に接しているだけですよ」
「そっか…」

 こう正直に言うのは、木村さんに対する気持ちは同じ総務課の一員としているだけでそれ以上のは無いからで、それを聞いた水瀬編集長はホッとした表情を見せてカクテルを飲む。

 どうして急に私と木村さんのことを聞いてきたのかわからなくて理由を聞けばいいのだけど、せっかくの雰囲気が悪くなるんじゃないかとか思って、聞くのを止めて別の話題をしようかな。

「K駅周辺に美味しいカレー屋さんがあるんで、是非お休みの日に行ってみてください」
「へぇ美味しいカレーがあるんだ、行ってみたいな」
「編集部の皆さんとご一緒にどうですか?」
「いや…、星野さんと一緒に行ってみたいんだよね」
「わ、私とですか?」
「そっ」

 水瀬編集長かなり赤い顔をしてるけど、もしかして酔ってるからそんなことを言ってるのかな
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