トールサイズ女子の恋【改稿】
「ん?電話かな?」

 水瀬編集長がまだ戻ってこなくて、水瀬編集長のスマホが何度も揺れるので電話かなと何気なくスマホの画面を見たら<着信:YUKI>と表示されていて、その名前と見たことのある女性の画像が出てきた。

「何?これ……」

 よく乗る電車の中吊り広告で見たことがあるような…、確か他の雑誌の表紙を飾っているモデルだよね。

 しかも水瀬編集長と腕を組んでいて2人とも幸せそうに笑ってるから、今までのドキドキが一気に下がって頭の中が混乱し始めた。

 もしかしてYUKIというのは水瀬編集長の彼女?腕を組むくらいだし、親密な関係ともとれるし、じゃあ何で私と手を繋いだりして手を重ねて身長は気にしないと言ったんだろう。

「訳わかんない…」

 2人で過ごしたディナーは楽しくて、ここのBarの雰囲気も良かったのに、故意じゃないとはいえスマホの画像を見てしまってからは楽しかった気分が萎えた。

「帰ろう……」

 これ以上ここにいたら何だかモヤモヤするし、まだ水瀬編集長は戻ってこないから帰るなら今しかないと思って、バックから財布を取り出し、紙幣を水瀬編集長のスマホの下に置いた。

「三斗さん。水瀬編集長が戻ってきたら、終電があるので先に帰ると伝えていただけますか?」
「分かりました。また飲みたくなったら来てください。1人でも歓迎しますよ」
「はい…」

 三斗さんは私の雰囲気に何か察したみたいだけど深く詮索せずにいてくれたのが救いで、軽く会釈してBarを出てS駅に向けて歩き始めると、通りすがりの人に肩がぶつかった。

「すいません」
「痛ってぇな!ちゃんと前を見ろよな、このデカ女!!」
「……気をつけます」
「ちっ」

 ほら、身長がデカイ女なんて所詮誰にも好かれないから、水瀬編集長だって酔ってからかってたんだよ。

「ふっ…、うぅ……」

 私は涙を流しながら、自分の身長コンプレックスを妬んだ。
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