トールサイズ女子の恋【改稿】
 S駅の化粧室で泣いて落ちたメイクを直して電車に乗り、ドアの傍に寄りかかって立ちながら外を眺める。

 勝手に帰っちゃったのは悪いと思うけど、故意ではないとはいえ、水瀬編集長のスマホの画面に女性と腕を組んだ画像を見ちゃったし、あのままBarにはいられないって思って帰っちゃった。

「彼女いるのに、どうして私を食事を誘うんだろう」

 腕を組んで幸せそうに笑顔でいる水瀬編集長とYUKIという彼女の写真は絵になっているし、益々水瀬編集長が何を考えているか分からなくて、外の景色をぼうっと眺めていたらバックにしまっているスマホが揺れたので取り出すと、水瀬編集長からメールが届いた。

『今日は長く付き合わせてしまったけど、電車に間に合った?ミナセ』

 私が先に帰ったことには触れていなくて、電車に乗れたことを心配しているメール。

「どうやって返事をしようかな…」

 返信画面を表示して、返事の言葉を書いては消して、書いては消してを繰り返す。

「『先に帰ってすいません、無事に電車に乗れました。イタリア料理、美味しかったです。誘っていただいて、ありがとうございました。お仕事で忙しいですが、お疲れが出ませんように。お休みなさい。星野』っと…」

 メールは堅苦しい感じの内容になったけれど素直な気持ちを書いて、送信ボタンを押してスマホをバックにしまう。

「まだ目が腫れてる」

 ドアの窓ガラスに反射して写る自分の姿にがっかりし、明日も仕事なのに、1日で治るかな?

 とぼとぼとアパートへ帰ってからは、メイクを落としてシャワーを浴びてベッドに潜るけれど、頭の中であの画像が浮かんできて、なかなか寝つけなくて身体を何度も寝返りさせた。

 今まで水瀬編集長と話せたり食事をしていた時は嬉しくて胸が高鳴っていたのに、今はガラスが砕かれたみたいにボロボロとなっている。

「グズっ……」

 シーツを頭まですっぽりと被り、すすり泣きの声を漏れないようにした。

 彼女がいるのに、どうしてディナーに誘うの?水瀬編集長のことが分からないよ………
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