トールサイズ女子の恋【改稿】
◇第7章:他の人に誘われても浮かぶのは、あの人でした
 部屋の目覚まし時計のアラームが鳴り響き、シーツから腕を伸ばしてアラームを止めてむくりと起きた。

「うわぁ、髪がボサボサ…」

 無造作に広がった髪を触って深いため息をはき、目もまだ腫れてるような気がして、ベットから降りてキッチンで蒸しタオルを作ってあててみる。

「少し腫れが引いてくれると、助かるんだけどな」

 昨日は久しぶりに涙をたくさん流したような気がして、枕には流した涙の跡があった。

 あんなに泣いたのはいつ以来だろか、元彼と別れた時はあぁまたかって納得していたから泣かず、昨日は楽しかった気分でいたのに、高い所から一気に急降下する乗り物にみたいに気分が落ちたもんな。

 学生のアルバイトじゃないんだからズル休みなんて出来ないし、取りあえず着替えなくちゃ。

 クローゼットを開いてスカートよりパンツスタイルでいこうか…、徐々に肌寒くなっているし、服装もそれに合わせてた物に切り替わってくる。

 なんとか目の腫れが引いたので着替えてアパートから出て、最寄り駅のホームで電車を待ちながらいつものように音楽プレーヤーで曲を聴くけれど、明るめな曲よりもバラードを選んだ。

 それは男性ヴォーカリストのカバー曲で、ピアノの伴奏と歌声を聴いて感傷に浸る。

「目元の腫れは、何とか誤魔化せてるかな」

 バックからコンパクトミラーを取り出してメイクを確認をしていると電車が来たので乗り込み、いつものようにドアの傍に立つと視界にYUKIが写っているの中吊り広告が入ったから思わず顔を反らして、ドアの手すりをギュッと掴んだ。

 目を開けていても閉じていても2人の画像がちらちらと浮かんで、水瀬編集長はあんなに可愛い子が彼女なのに、こんな図体がデカイ私なんかに声をかけたりするんだろう。

 物珍しさとか?内心では俺よりデカイなって言ってるかもしれないし、またネガティブモードが稼働してきた。

 此れから仕事なのにこんなんで大丈夫なのだろうか、シャキッとしたいけどスイッチが入りづらいな。
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