トールサイズ女子の恋【改稿】
 そして案の定、木村さんのお手伝いは深夜近くまで続いていて、他の人たちは定時と同時に帰り、課長は他部署の人に呼ばれて接待に行ったので、総務課にいるのは私と木村さんだけ。

「こんな時間まで手伝わせちゃってごめんね。予定とかあった?」
「特に無いので大丈夫です。2人でやれば早く終わりますよ」

 このバインダー1冊分を終えれば帰れるかなとフッと気を抜いたら、お腹の音が盛大に経理課に響くように鳴ってしまった。

 1人きりならお腹が鳴ってもへっちゃらだけど、今は木村さんもいるし…とチラッと木村さんの方を見ると、木村さんは手で口元を押さえてククッと笑っている。

 男性と2人きりの時にお腹を鳴らすなんて、女性として失格というか…。

「長く付き合わせちゃったし、この後はご飯を奢るよ」
「でも…」

 ご飯を目当てにして残業をした訳でもないから断んなくちゃと思ったら、またお腹の音が鳴って顔がカアッと熱くなり、ハハッと笑うしかない。

「軽めに食べれるお店があるから、そこに連れていくよ。またお腹がなっちゃうといけないし」
「……分かりました」

 木村さんのからかいに耐えつつパソコンの入力を続け、私の分はこのページを入力すれば終わりで、マウスを使って保存ボタンを押す。

「木村さん、このバインダーの資料の入力は終わりました」
「僕も終わったから、ご飯に行こうか」
「はい」

 私たちはパソコンの電源を落として帰り支度をしていると総務課のドアがノックされ、総務課に入ってきたのは水瀬編集長だった。
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