トールサイズ女子の恋【改稿】
 そしてお昼時間になり、最近は飲み過ぎてるから野菜多めにしたお弁当と栄養ドリンクをコンビニで買ってきて、課長は二日酔いに効く飲み物をゴクリと飲んでいる。

「昨日の接待は長引いて、とても疲れたよ。何処も不況だから関係を濃くしないとやっていけないからね、今回は普段から付き合いのある印刷会社だけど飲まされたなぁ」
「お付き合いは大変ですよね、どこの印刷会社ですか?」
「ああ、星野さんはうちの前は印刷会社にいたんだっけ?"青木印刷会社"という所だよ」
「えっ……」

 課長から"青木印刷会社"と聞いて箸を持つ手をピタッと止めたのは、私が四つ葉出版社に入る前にいた会社で、そこでは多数の出版社との契約もしているから四つ葉とも繋がりがあるなんて思いもしなかった。

「青木印刷会社、以前に勤めてました。そこを退職して、この四つ葉出版社に転職したんです」
「そうなの?また接待ある時に星野さんを呼ぼうかな」
「ハハッ……」

 課長は期待を膨らませるけど接待の場に元彼がいる可能性があるだろうし、そこは曖昧にして誤魔化しちゃった。

 "青木印刷会社"を退職してしばらく経つけれど、私が所属していた事務員の人たちは温かくて居心地が良くて、そこで出会った元彼との恋愛は振られ続けていた学生時代よりは良かったけれど、結局は破局して退職の道を選んだ。

 水瀬編集長にもあんなに可愛いモデルの彼女がいるんだし、私って社内恋愛よりも流行りの"婚活"とやらに精を出して"理想の相手"を見つけた方がいいのかもしれないと、そんなことを考えながらお弁当に入っている人参をぽりぽり食べる。
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