トールサイズ女子の恋【改稿】
「怪我をしなくて良かった…」

 水瀬編集長は体を少しだけ起こして壁に背を預け、まるで大切なものが壊れなくて良かったと安心した子供みたいに私を強く抱きしめる。

 心の中で初めて抱きしめられちゃったと思ったのは、今まで手を繋いだぐらいだから、こんなに密着したのは初めてなんだもの。

 水瀬編集長って身長は低いけれど胸元はしっかりと筋肉がついて、改めて男の人だと思うと胸が鼓動が静まりそうにもない。

「まだドキドキしてる」
「私もですよ」

 水瀬編集長の胸元に耳を当てると、服越しでも心音が早く鳴っているのが分かる。

 どうしよう…、このまま時間が止まってしまえばいいのにと、Barでの帰り道はあんなに胸が張り裂けそうな想いをしたから腕を振り解けばいいのに振り解けない自分がいて、今はこんなにも温かい気持ちが胸に広がっているのが分かる。

「また水瀬編集長に助けて貰いましたね」
「いつでも助けるよ」
「はい…」

 私が水瀬編集長の背中に腕を回してぎゅっと服を掴むと、同じように水瀬編集長も腕を私の背中に回して、より身体が密着する。

「暫くさ、このまま抱き締めてもいい?」

 私の耳元で水瀬編集長がそう囁いたので「はい―…」と言おうとした時、頭の中でYUKIの顔が浮かんだ。
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