トールサイズ女子の恋【改稿】
 仁さんに水瀬編集長のことを嫌いなのかと聞かれ、改めて私は水瀬編集長のことをどう思っているか、これまでのことを振り返ってみた。

 歓迎会で出会って帰り道を一緒に歩いたこと、頭についた埃を取ってくれたり、スマホを落として在庫室で探して見つかって安心していた私の頭をぽんぽんされたこと、ランチに行く前の日はどんな服を着ていこうか悩んで、服装を褒めてくれたのがとても嬉しかったこと。

 胸に針がちくりと刺されたように痛い思いをしたり、転びそうになった時や段ボールが落ちてぶつかりそうな所を助けて貰ったこと、ギュッと抱き締められて胸のときめきがいつまでも続いてたこと、元彼にキスをしそうになって心の中で助けて欲しいと思ったこと。

 "身長なんて気にしない"って言ってくれたこと―…、私の心の中はいつの間にか水瀬編集長でいっぱいになって大きくなっていて、嫌いだったらいっぱいにならない筈で、私が水瀬編集長のことをどう思ってるか、もう"この気持ち"しかない。

「あんたが水瀬のことをどう思ってるか想像はつくけど、俺からは言わない」
「わ、私は…」

 私は水瀬編集長のことを"好き"なんだ―…、そう自覚した瞬間に涙がぼたぼたと頬を伝う。

 こんなにも涙を流すくらい、水瀬編集長の存在が大きくなってたんだ。

 でも水瀬編集長のことを"好き"と自覚しても彼女がいるし、結局は隣に立つことは叶わないと思うと涙がまた流れ、手で何度も涙を拭っても止まらないよ。
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