トールサイズ女子の恋【改稿】
 いきつけの【Bar Jewelries】に入ってマスターである三斗さんが作ってくれたカクテルとおつまみを一緒に他愛のない話をして、そろそろ木村のことを聞いてみようと思って勇気を振り絞る。

「星野さんってさ、木村と仲が良いよね」
「木村さんとは普通に接しているだけです」

 どんな答えが返ってくるかヒヤッとしたけれど、星野さんは木村に対して何も思ってないことが分かって心底ホッとした。

 好意を持ってたらこんな反応をしないよなとホッとして、『Clover』の話や身内の話をしてみると、星野さんは一人っ子で俺は自分の身長の低さを自虐しながら妹がいる話をした。

「小柄でいいな…」

 星野さんが小さく呟いて俯きながら手をギュッと握り、理由を聞けば星野さんも身長コンプレックスがあるらしく、俺なら分かるしそれを取り除いてやれる自信がある。

「………俺は背が高くても気にならないよ」

 カウンター席に置いてる星野さんの手に自分の手を重ねて本心を伝えたのは、木村にはその役をさせたくないからだ。

 星野さんの顔をみると瞳が潤んでいて、きっと俺と同じように身長コンプレックスに悩んできたのだろうな。

 スマホをカウンターに置いてトイレに行って戻ると、星野さんの姿がなくて焦る。

「三斗さん、星野さんは?」
「あー…、美空ちゃんなら終電があるって先に帰ったよ。飲んだ分を預かってる」
「そう…」

 次の日、星野さんとは話したいタイミングが掴めず、総務課に鍵を取りに行った時も視線は合うけど会釈するだけで、周りに人がいるから呼び出しとか出来ないよな。

 会議が終わって鍵を返しに総務課に行ったら星野さんと木村が2人きりで残業をしていたので心の中が黒い感情で支配され、木村のことは普通に接してるって言ったことを分かっていても、2人きりというのが黒い感情を更に増大させて悪態をつくような態度になってしまった。

 まるで思春期真っ盛りで反抗期の頃の自分を思い出して、呆れる。
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