結婚のススメ
購買で売れ残ったパンを食べて、午後の授業に参加する。
1日(って言っても遅刻したから半日だけど)はあっという間だった。
「アキくん」には、朝は置いてかれたけど、帰りは一緒に帰りたい。
まだ道もよくわからないし、第一、ひとりで家に帰ったことなんてなかったんだから。
「えっと・・・「アキくん」は3年A組・・・」
呟きながら「アキくん」のクラスを目指す。
あっ、いた。
背の高さからかそれとも爽やかなオーラか、割と遠くにいても見つけられる「アキくん」は階段の踊り場に立っていた。
「アキく・・・」
「好きなんです」
「ごめんね」
名前を呼ぼうとしたのと同時に聞こえてきた、告白のセリフ。
「聞いてくれてありがとうございました」
声と一緒にパタパタと階段を降りていく足音が聞こえた。
どうやらあたしの旦那さんは、告白を断ったらしい。
きっとそれって、あたしがいるからだよね?
奥さんがいるから、告白を断ったんだよね?
勝手に解釈して、なんだか嬉しくなって今度こそ名前を呼ぶ。
「アキくん」