結婚のススメ
「できたよ」
いつの間にかウトウトしてたらしい。
声をかけられて目を覚ます。
「いい匂いがするわ」
テーブルの上を見ると、お皿が綺麗に並べられている。
色とりどりの具材が乗ったお皿を見つける。
「すごい!これ全部あなたが作ったの?」
「ただの三色丼だから」
「サンショクドン」と呼ばれた料理を見つめる。
ぎゅるるるる〜〜〜〜
思わず鳴ってしまったお腹を慌てて抑える。
「違うのよ!だって今日はパンしか食べてなくて・・・それで・・・あの・・・」
思い浮かばない言い訳作りに困っているとあっはっは、と大笑いする「アキくん」
「どうぞ」
「・・・いただきます」
おずおずと一口食べると、食べたことのない味が口の中いっぱいに広がった。
なにこれ、おいしい!
「あなた天才だわ!こんなおいしい料理、あたしはじめてよ!」
興奮気味に言いながら、どんどん口に運ぶ。
「どういたしまして」
いつもの、人に見せるニコニコとはちょっと違う、はにかんだような笑顔。
相変わらず爽やかなオーラは出てるけど、素の表情、というかいつもより何倍も近付きやすい感じがする。
「その顔の方がいいわ。わたしはいつものあなたの笑顔は苦手よ。なんとなく、壁を感じるもの」
「うっ・・・うるさいよ。早く食べなよ」
どんどん食べてるのに、そんなことを言われるなんてちょっと心外だったけれど、あたしはきっとこの三色丼の味を忘れないんだろうな。
そんなことをふと思った。