結婚のススメ
「・・・メ!・・・ツメ!ナツメ!」
名前を呼ばれてハッと目を覚ます。
アキを待ちながらまたしてもウトウトしていたらしい。
「アキ!おかえり!」
「・・・ただいま」
誰かが家に帰ってくるのって、なんかいいもんだ。
うちにはママはいないし、パパもいつも仕事で遅かったから、あの家であたしは1人でいることが多かった。
鈴木も居たし、寂しいなんて思ったことはないけれど。
誰かとおかえり、ただいま、と毎日言い合えることがこんなに嬉しいなんて。
思わず緩む顔は誤魔化しようがない。
「っていうか・・・これどうしたの?」
アキはあたしの嬉しそうな顔には触れずに、テーブルの上に並ぶ夕食を見ている。
「ハンバーグ!」
「見たらわかるけど・・・なに?まだ何か俺に頼み事?」
あたしは見返りを求めるために料理をしてるんじゃない。
言葉に精一杯の気持ちを込める。
「違うの。見返りなんていらない。ただ、アキのご飯はあたしが準備したかったの」