結婚のススメ



話しかけるタイミングを図るけど、それはなかなか来ない。



半ば諦めかける。

仕方ない。今夜は新しい作戦を練ろう・・・



「ちょっと!ナッツ!大変」

下をうつむいていると隣にいた万智ちゃんがあたしの肩をバンバン叩きながら、「こっちに来る!」と言っている。



「へっ?」

顔を上げると目の前にいるのはハル先輩。



なにこれ?

もしかして今がチャンス?



「聞きたいことがありま・・・」
「奈都芽ちゃんはっけん〜☆」



同時に言葉を発したせいで、先輩の言ったことはよく聞き取れなかった。



「あの・・・」
と、もう一回聞いてほしくて話しかける。


先輩は少しかがんであたしの耳元に顔を寄せる。



「放課後、中庭で待ってて」




それが何を意味するのか、その瞬間のあたしにはわからなかった。


だけど、周りの女子たちのきゃー、という悲鳴何が鳴り響く。



ふと、見ると、メンバーに混じるアキの姿が見える。



目が合った気がしたから名前を呼ぼうとしたけど、それは叶わなかった。



アキはもう、仲間の輪の中であたしに背を向けていた。




「ベッドの中なら、近いんだけどな」


思わず独り言を言うと、隣にいた万智ちゃんに「なんか言った?」と言われた。



「なんでもないよ」



「それより、ハル先輩さっきなんて?」

さっき、というのは先輩が耳元で言ったことだっていうのはあたしでもわかる。



「放課後、中庭で待っててだって」

言われた通りに伝えると、あたしよりも万智ちゃんの方が興奮している。



「ハル先輩からお誘いされたの?よかったね、ナッツ!」



これがお誘いなのかはわからないけれど、アキのことを聞けるチャンス。



放課後が、待ち遠しくなった。




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