結婚のススメ



「さあ、奈都芽。ハンコを押すんだ」


いつどこで用意されていたのか全くわからない婚姻届けにハンコを押して、役所に提出した。



その帰りにパパから渡された鍵を持って、用意してもらったマンションに行く。


これまたいつの間に用意されていたのか、すぐにでも生活ができる状態だった。



が・・・



「なにこれ?!狭いじゃないの!」

リビングと寝室、それにキッチン、バスルーム。
全ての面積を足しても向田家の玄関ほどかもしれない。


「当たり前だろ。もともと住んでた家が広すぎるんだよ」
「ベッドも・・・ひとつしかないわ」

寝室に置かれたベッドを見て驚愕する。

「夫婦だからね。仮にも。安心してよ。なんもしないから」
「えっ?!でも夫婦って・・・」

「やめてよ。そういうのしちゃうと情が湧いちゃうじゃん。割切った関係でいようよ?ね?」

相変わらず出会った時のニコニコ顔で「アキくん」は言う。



え・・・?



「君のお父さんは俺たちに結婚してほしい。俺は住む家と養ってくれる経済力が欲しい。利害関係が一致してるだろ?」



え・・・?



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