花火~散る記憶~
『今日は暑いわねー。特別に塾の帰りになんか冷たいものでも買ってらっしゃーい』
中学3年の夏休み。私はいつものように、進学塾へ巧弥くんと行った。
送り迎えは、大好きなお兄ちゃん。
私のお兄ちゃんは、私より1つ年上で 私の行きたい高校を通っている。
『繭ー。俺ちょっと先生に質問したいことがあるから、先に外出てて?』
『分かったーっ』
外へ出たら、猛暑日で太陽の光がとても眩しかった。
道路を挟んで向こう側には、お兄ちゃんがいた。
私は横断歩道を青になったから渡ったつもりが…太陽の光が反射していただけで、本当は赤だった。
なにも分からないまま進んだら、目の前には車があった。
そこからはスローモーションに見えた。
でもそれに気付いて、お兄ちゃんが私をかばった。
そのせいではしんたしんだ死んだ。
そして私は強く頭を打った。
……そこからは何も覚えてない。
ただ今思えば、頭を強く打ったばかりに記憶を無くしたのだと思う。
しかも巧弥くんだけ―――――…
「巧弥くん………っ」
やだ…記憶を思い出したら、悲しみが一気に溢れ出てきた。
どんな気持ちで私と一緒にいたの?
どんな気持ちで毎日を過ごしていたの?
私が巧弥くんだったら耐えられないよ…