花火~散る記憶~
…あれ?ここどこ?
病院?
うっ…。また頭が痛くなった。
この天井からの眺め…どこかで見覚えがある。
「繭!!」
お母さんが涙声で私を呼んで、強く抱き締めた。
「ねぇ、なんで私ここにいるの?」
「学校の保健室で、頭が痛いってずっと言いながら 倒れてたのを、巧弥くんが助けてくれたのよ」
え?なんでお母さんが“巧弥くん”って言うの?
「安堂くんと知り合い?」
「あぁ、ほら。安堂巧弥くんって言ってたから…ね」
不思議に思ったけど、そこは流した。
お母さんが、招き入れたのは あっくんだった。
「大丈夫か?寝たままでいいよ」
「ごめんね…。なんか急に、“お兄ちゃん”って人が血だらけで 出てきて、私がその人を見て死ねたらって思ってたの。そんな変な夢見たら、頭痛くなっちゃって…」
その話を聞いた瞬間、お母さん少し複雑な表情をしていた。あっくんは、ずっと顔をしかめていた。
「お母さん、あっくんどうしたの?」
「ううん。そんな妙な夢見ちゃって嫌ねー。あなたのお兄ちゃんは病気で死んでるのにね…」
そう言ったお母さんの顔は、どこか弱々しく見えた。