バストコンプレックス
着れないよ…あんなに胸元の開いた服なんて。
もう少し胸が大きければ、デザインなんて気にせずに色んな洋服が着れるのに…


ぎゅっと胸元で結ばれたニットカーディガンのリボンをにぎりしめて目的の場所まで早歩きで進む。








待ち合わせ場所が見えてきて、すぐに彼を発見して、早歩きから小走りへ変えて彼の元へと急ぐ。




「努!待たせてごめんね?」




近くまで行った所で声をかけると、努は優しい声で



『俺も今さっき来た所。』



そう答えてくれた。




「今日はどこで食事する?」



付き合い始めて2週間。


まだまだお互いの事を知っていこうとしている状況の私達。



こうして待ち合わせて会った瞬間は、どうしても緊張してしまってぎこちなくなってしまう。



『んー…千里が嫌じゃなければ、俺の家でご飯作ってほしいな…』




ドキンと胸がなる。



お互い一人暮らしの社会人で、家へ行く…



そうなったら…その先は…





答えに困っている私を見て努は、こう続ける。




『嫌なら、いいんだ。またの機会でもさ…』



そう言ってくれても、その表情は言葉とは裏腹で、すごく残念そうで…



思わず



「いいよ」



そう答えてしまっていた
< 2 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop