キスマーク


また催促が来る前に、さっさと服を着てしまおう。


そう思い、先ずは床に落ちていた下着を拾う。ブラジャーのホックを留めながら、何気なく胸元を見る私。



ピタリ、



と、手が止まる。



目に入ったのは、胸に印されたキスマーク。



それを見て、“また―…”と、思ってしまう。



それは知り尽くした事の一つで、行為の最中、必ずヒロは私の肌にキスマークをつける。



そう言えば、今夜は何時もに増して胸にキスをされたし、普段よりも長く首筋も攻められ―…



そこまで考えると、まさか……と思う私。


ほぼ裸の状態で洗面所に急ぐ。


鏡を見ると、そこに映るのは、首筋につけられた濃いキスマーク。



しかも二つも。



よりによって首筋なんて、一番厄介な場所につけてくれたな……と思わず溜め息。



「ねぇ、何時も思うけど何でつけるの?」



部屋に戻って、首筋を指差しながらヒロに言う。



「だってシオリさん明日合コン行くんでしょ?先約アリって印」


「何それ……っていうか困るんだけど。月曜までに消えなかったらどうすんのよ」



今までは胸とかお腹とか―…見えないところだったから、まだ良かったけど、首筋なんて目立つじゃない。



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