キスマーク



美しい日本庭園が見える、二人で食事をするには贅沢な広さの部屋。予想はしていたけど、いきなりこんな高級な場所に初対面の人と二人きりにされると緊張もする。


なかなかちゃんと相手の顔も見れない。というか、こういう場合なんて切り出したらいいのか……


そんな事を思っていると、



「今夜は本当に急遽ですみません」



と、口を開いてくれたのは“久瀬さん”。



「あ、いえ……」



と言って、顔を上げると、



「久瀬弘と言います。こういう会食は初めてで―…ちょっと緊張しています」



少し苦笑いを見せる久瀬弘―…“クゼヒロムさん”。


三十五歳と聞いていたけど、それよりも少し若く見える。でも、子どもっぽいとかそういう訳ではなく雰囲気は落ち着いた大人の男性。


爽やかで清潔感があって、このルックスであの職業なら結婚相手なんて困らないのでは?と余計な事を思ってしまうくらい。




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