キスマーク
「冷たいなぁ、シオリさん」
やっと服を着始めたヒロが溜め息混じりに言ってくる。
「冷たくて結構」
ヒロが服を着終えるのもまたず、私は玄関へと歩き出す。
「待ってよ、シオリさん」
“待ってってば”
というヒロの声も無視してミュールを履き、玄関ドアを閉める。
ほんの数分前までは、あんなに淫らな声で鳴いて、逞しい身体にしがみついていたのに―…服を着てしまえばさっきまで見せていた顔が嘘のようにヒロに背中を向ける。
未練なんて1mも無い。
無いけど、ただ―…私の首筋には彼の付けた“しるし”がはっきりと残ってる。