キスマーク
テンション高めな麻里に、
「まぁねー…」
と、正反対のテンションで返すと、
「あれ?何でそんな乗り気じゃない答えなの?」
と、私の顔を覗き込んでくる。
「別に乗り気じゃないってわけでも―…」
ないけど、仕事に力が入ってしまうほど楽しみって程でも無いのは事実。
「そろそろ私たちもさ、真面目に結婚相手探して、寿退社考えないと、どんどん後輩に抜かれちゃうよー?」
「……それはわかってる」
「ねぇ聞いた?葉山さん、再来月いっぱいで退社だって」
「え、葉山さん?」
「そ。何でも常務の勧めで取引会社の息子とお見合いしたらしくて、とんとん拍子でゴールイン」
「へぇー…」
麻里の言う葉山さんは同じ秘書課に所属する一つ後輩になるコ。
ついこの間、大学時代から付き合っていたフリーターの彼氏と「別れましたぁ~」って言ってた記憶があるのに、再来月で退社の決まるゴールインをするとは……ちょっとびっくりだ。