キスマーク
相手なんて見なくてもわかる。画面に表示されるカタカナ二文字。
しつこいコール。
出るわけないでしょ?
視線はその二文字を捉えたまま、携帯を握る。ずっと鳴り続けていた電話。やっと切れたところで念の為、直ぐにマナーモードに切り替える。
と、また彼からの着信を伝える表示―…
何度も何度も、切れてはまた架かってくる電話。
その着信はタクシーに乗って自宅に帰る間ずっと続いていた。
本当にしつこい。
何の真似よ……
タクシーを降りて自分の部屋に辿り着くと、大きな溜め息が一つ出る。
携帯は、というと、まだ彼からの着信を伝え続けている。
何時まで鳴らすつもり?
ああ―…もう本当にいい加減、区切りをつけないといけない時が来た。
携帯電話を手にしたまま、ゆっくりと深呼吸をする。そして、
「―…もしもし」
と、ヒロからの着信を取った。