キスマーク
『……』
黙ってしまうヒロ。けど、
『結婚するの?あの医者の男と』
と、また別の問いかけをしてくる。
結婚するの?なんて聞かれても、会ったばかりでわかるわけない。ちゃんとした交際だって始まったわけでもない。でも、
「するかもね……」
と、私はヒロに答える。
『―…』
また、黙ってしまうヒロ。
私は携帯を耳にあてたまま、その沈黙を聞く。もう会話が無いのなら、早く切ってしまえばいいのに―…携帯越しのヒロの存在を感じてしまう。
サヨナラの瞬間は刻々と迫ってる。
だからまるで、それを名残惜しむかのように、そっと瞳を閉じてヒロと繋がったままの携帯を耳に当てる。