キスマーク
さっき駅で会った時よりも、乱れた茶色の髪の毛。猫みたいに、つい、撫でてしまいたくなる。
でも、もうその柔らかな髪に触れることもない。触れては―…いけない。
「で、何しに来たの?」
玄関で腕を組み、ヒロに冷たく接する。そんな私に、
「シオリさんに会いに」
と、答えるヒロ。会いたくて仕方なかった、と言わんばかりの表情で私を見つめてくる。
そんな瞳で見つめたって、私が聞いてあげられるのはココまで。
「じゃあ用事はすんだね。わるいけど帰って」
部屋に入れる気なんて毛頭ないと言うように、私は玄関ドアを何時でも閉める事が出来るようにノブを持つ。
と、
「まだ終わってないよ。用事」
そう言って、腕組みをしていた私の両腕を解いて持つと、
「―…!」
いきなり耳たぶを噛んできたヒロ。