キスマーク
「シオリさんっ!」
ヒロが私の名前を呼ぶ。真剣な目つきで私を見る。
やめて。
名前を呼ばないで。
そんな瞳で見ないで。
そんな行動も言葉も全部、ぜんぶ―…感情的になっているから出てくるのよ。
ドラマチックなシチュエーションに酔ってしまっているだけ。
私だって、勘違いしそうだもの。
若さだけで突っ走らないで。
掻き乱さないで。
今さら、
踏み込んでこないでよ。
「もう―…っ、サヨナラだからっ―…」
これ以上、私に構うのはやめて、と、バタンッ、とドアを閉め、
「ヒロの―…ばかっ」
そう呟く。
首筋には新しく印されたキスマーク。
これで私達の関係は終わりだと思うのに、甘く切なく、私の心を掻き乱していく―…