キスマーク
「シオリさん―…」
ヒロの腕が私の身体をすっぽりと包む。
真夏の暑さとは違う、優しい温もりが全身を覆う。
気付いてしまった。
言ってしまった。
ヒロへの本当の気持ちを―…
けど、
もう後悔なんてない。
ヒロの温もりの中で、私達の未来を信じて、進むしかない。
「もう一回言って、シオリさん」
そんなヒロの言葉に、
「―…好きよ」
と、答える。
「夢じゃないよね?」
「夢じゃないよ」
「他の男の所に行ったりしない―…?」
「行かないよ……」
自分の気持ちは誤魔化せなかったもの。
多分ね、麻里や他の同僚にこんな話をすれば、「バカね」「勿体無い選択」「後悔するわよ」って言われると思う。
でも、それでいい。
これからあると思う、沢山の“山”を覚悟した上での決断だから。