キスマーク



想いが通じ合って、初めて重ねる身体。


柄にもなく緊張しているということが、貴女にも伝わっているだろうか―…



思い出す。初めて出逢ったあの夜のこと。



俺に抱かれながら、貴女は泣いていた。



泣いていた、といっても涙を流していたわけじゃない。



貴女の心が泣いているような気がした。



ただ、そんな事を察しても、特別何かが出来るわけじゃない。



貴女を繋ぎ止めることに精一杯だった。



シオリさんの身体から“好き”って気持ちが伝わる、なんて言葉を言ってみても、実際は100%の自信なんてない。



シオリさんから見れば俺なんて社会にも出た事のないガキ。



大人で綺麗な貴女とは不釣合いなんてわかってる。



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