キスマーク
こういうシチュエーション……慣れているんだろうな、と思う。
私はヒロより長く生きているけど、出逢ったばかりの得体の知れない男とこんな場所に入るのはさすがに初めて。
「いいの?俺に任せて」
ヒロからの最終確認。その声は甘く、やはり何処か艶っぽく耳に響く。
「いいってば」
私の口から出るのはそんな投げやりな言葉。
だって、だからこんな場所までのこのこと着いてきたんでしょ?
ぽっかりと心に穴が開いて、愛だの恋だの、そんな類のことはもうどうでもいい。そんな気分。
だから、愛だの恋だの、そんな特別な感情なんて欠片も無いまま―…人肌の温もりだけに触れて気持ち良くなりたい。
「じゃあ耳たぶ噛んでもいい?」
スッと私に顔を近づけて訊ねてくるヒロ。
「何で耳たぶ……」
「いい?」
そんな問いかけに、“いいよ”と私が答える前にヒロは私の耳たぶを甘く噛んだ。
「っ」
思わず声が漏れそうになる。ただ、耳を噛まれただけなのに。まだ破局して一ヶ月ほどなのに、もう飢えてきているのか―…
「シオリさん、彼氏いるの?」
「いたらあんたとこんなトコまで来ない」
「だよね。俺もフリー」
ニコリと微笑んでヒロが言う。そして今度は私の唇に軽いキスをおとしはじめたヒロ。
“ヒロ”
見かけからして、チャラい男。
真面目に付き合う相手にはまず選ばない。
でも、
そんな男と私は今から抱き合うんだけど―…
ニットを脱がされながら、ぼんやりと思う。
そして、