キスマーク
年下のくせに、妙に女の悦ばせ方を知っているヒロに、
「シオリさん、可愛い」
「好きになりそう」
なんて台詞をベッドの上で言われたって、素直に受け止めるだけ無駄。
無駄、だ。
そんな甘い言葉の数々は、より気持ち良く繋がるための刺激剤で良い。
数時間前に出逢ったばかりの男と身体を重ねる行為なんて、なかなか癒えない傷の痛みを紛らわせるもの。
その場しのぎの応急処置。
そして、きっと私の上に乗る彼にとっても、私との行為はその場しのぎの欲求の捌け口―…
ヒロの動きが速度を増すにつれて、
「は……あっ、あぁ―…っ」
私の口からは淫らな息遣いが漏れる。
ここから先は余計な事は忘れて、ただ、気持ち良くイキたい。
淫らに鳴きながらヒロの顔を見ると、彼も私と同じ“寸前”なのだと感じる。
そして、
「ごめん―…っ、シオリさん」
ぐっと身体をヒロに抱き寄せられる。と、同時に、
「っ」
身体中に甘い痺れが駆け巡った。
私とヒロの初めての時間が終わる。