キスマーク


私は空振りになりそうだけど、他のメンバーはどうなんだろう……とか、みんな二次会に行くのかな、とか、そんな事を考えながら化粧室へと歩く。


そして、乾杯からどの位時間経ったのだろう、と、腕時計を確認し、化粧室のドアノブに手をのばそうとした瞬間、


私とは違う別の誰かがドアノブをまわし、後ろから押されるように中に入れられてしまう。



「な―…」



何なの一体!?


いきなりの出来事に軽くパニック状態になる。しかも、私を押した人物の手は私の身体を背後から抱きしめるようにまわされていて―…どうみてもその手は男性の手。“痴漢”という二文字が瞬時に頭に浮かぶ。



何でこんな場所で……?


でも、今はとにかく声を出して助けを呼ぶべき―…



そう思って声を出そうとすると、



「シオリさん」



耳元で聞きなれた声が私の名前を呼んだ。



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