キスマーク
振り返るよりも先に、ふと見たレストルームドレッサーの鏡。
そこに映るのは茶髪の男。一昨日の夜、会ったばかりの―…
「ヒロ……!?」
鏡越しに名前を口にする。少し冷静になれば、私の身体にまわされたこの手には何度も触れられた記憶がある、と気付く。間違いないヒロだ。
それにしても―…
「何で……こんなトコに……??」
身体を捕らわれたまま、疑問を口にする。
「何で、って、友達と飲みに。だってここダイニングバーでしょ?」
「そうだけど……」
まさか、私の合コンの場所とヒロが飲む場所が同じだなんて―…
「偶然だね、シオリさん」
ヒロが耳元で吐息を吹きかけるように呟く。
何て憂鬱な気分にさせられる偶然なのだろう。新しい男を探して飲み会をする同じ空間に、一昨日抱き合ったばかりの男がいるだなんて、ますます気分が下がる。