キスマーク



「何よ……ヒロも飲みに出てたの?」


「そうだよ。同じ医大のメンバーとね」


「ふーん……」


「シオリさんを見つけたから追いかけてきちゃったんだ。シオリさんは合コンでしょ?」


「一昨日、そう言ったじゃない……」


「ああ。そうだね」



鏡を見れば、ヒロも鏡越しに私を見てる。その視線がなぜか痛くて、



「―…離れてよ」



そんな言葉を口から吐いて、ふいっと目を逸らしてしまう。



大人二人が入るには狭い、完全個室の場所。



こんな場所で何時までこの体制でいるつもりなんだと思う。それに、他のお客さんが来たら―…



そこまで心の中で思うと、



ガチャン、



と、室内に響いた施錠音。




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