キスマーク
可愛い顔して小悪魔の様な微笑み。特別な感情がなくてもクラッときてしまいそうになる。
「どう?好みの男はいた?」
「ヒロには関係ない」
ぷいっと顔を背けて答える。
「俺が言った通りだったでしょ?無駄足って」
「今夜のがハズレだなんて私、一言も言ってないわよ」
「あんなに適当に相槌打ってたくせにね」
「っ」
何時からヒロは店内にいたのだろう、と思う。ヒロが同じ空間にいるだなんて思いもしなかったし全く気付かなかった。
何より“合コンに来た私”の姿を外野から見られていたことが気に入らない。
よりによって、こんな時に偶然、外で出会うなんて―…嫌な偶然だ。
「ねぇ、このワンピースって買ったばかり?」
鏡に映る私の姿をじっと見てヒロが訊ねてくる。
「ワンピース……?」
「何時もより露出度高くない?もしかして今夜の為に用意したの?」
「だったら何よ」
ヒロの問いに尖った口調で言葉を返す私。本当は少し前に何となく買ったお気に入りのブランドのワンピースだ。別に今夜の為にわざわざ用意したわけじゃない。けど、“だったら何よ”なんて、ヒロの言葉を認める様な返しをしてしまう。