キスマーク
「ふーん……」
鏡越しに私が纏うワンピースを見ながら、ホルターネックの結び目部分をクルクルと指で弄び始める。
「何よ……似合ってないとでもいいたいの?」
「ううん。その逆。似合ってるよ、シオリさん。今夜のシオリさんも凄く綺麗だ」
「―…」
何、そのお世辞―…そんな口だけの言葉で私が喜ぶとでも?そう思った瞬間、
「似合いすぎて腹が立つよ」
「っ!」
くいっと、ヒロの指が結び目部分を引っ張った。ハラリとホルターネックが垂れ、首周りから胸元でが露になる。慌てておちていくワンピースを押さえる私。
「ふざけないで!」
何してんの?さっきから、バカじゃないの??そんな瞳でヒロを睨む。
「ふざけてないよ」
「じゃあ、からかって遊んでるの??私の事なんて知らんふりして友達と楽しんでいればいいのに、わざわざこんな所まで追いかけてきてこんな事して―…!」
「怒らないでよ、シオリさん」
「ヒロが怒らせるような事―…」
“するからでしょ?”
そう言おうとすると、
「っ~…!!」
ヒロの手が私の口を封じてしまう。文句を言ってやりたいのに口が開かない。声を出せない。ますます募る苛立ち。