キスマーク
けど、そんな私のイライラなんて眼中に無いという感じで、
「せっかくだから、しるし、付け直しておくね」
と、ヒロが言う。
「っ!」
鎖骨部分に感じる甘い痛み。しまった、と思う。けど、もう手遅れ。
鏡を見れば赤い痕。
そして、私の口を覆っていたを今度は私の髪の毛に―…耳元を隠していた髪の束をとると、それを耳にかけ、
「今夜は大丈夫と思うけど―…念の為。一次会が終わったら真っ直ぐ帰ってよ」
と、色気を含んだ口調でヒロが囁く。
何よ、それ……
そう思うけど、言葉が出ない。さっきまで溜め込んだ文句の数々も出てきてくれない。
大体、そんな命令をする権限なんてないでしょ?彼氏でも何でもないんだから。年下のただのセフレに指図されるなんて腹が立つ。