キスマーク
部屋に入るとロータイプのリクライニングソファーに腰をおろす私。ここに来れば、最初は大体この場所に座る。
と、
「昨日は真っ直ぐ帰ったの?」
ソファーの後ろから声をかけてくるヒロ。そんな問いかけに、
「さぁ、どうだろうね」
と、真っ直ぐに帰宅したくせに、意味深に言葉を返してしまう私。
「シオリさんがここに居るって事は、寄り道せずに帰った証だね」
ストレートアイロンをかけただけの、私の黒髪を触りながらヒロが言う。
悔しいけど当たり。ヒロが察する通り。
「―…で?そっちは遊びまわって帰ってきたんでしょ」
「あの後、一軒寄ったけど別に遊びまわってはないよ」
「ふーん……みんな医大生なの?」
「そうだよ」
「あの女の子も―…?」
そこまで口を開くと、はっとして口を閉ざす。