キスマーク
それを見て、
「……そうやってると少しは医大生っぽく見えるわね」
と、私はヒロに言う。
「“っぽく”って―…事実医大生だし」
「見かけが軽いから最初に聞いたときは女を釣るための嘘かと思ったわ」
医大生だと、初めて聞いたのは確か―…二度目に会った夜。学生という事には納得できるけど、医大となると疑いの目でしか見れないのは仕方ない。
「酷いなぁ。そんなに頭ワルく見える?」
「申し訳ないけど、良くは見えないわね」
「こう見えてもストレートで入ったんだよ?」
「国立?だったら少しは見直してあげる」
勿論、私立でも十分凄いんだけど、何時もの癖で上から目線で言ってしまう嫌な女。
「私立―…だけど、大学名はシオリさんも知ってると思うし、偏差値はそれなりにあると思うよ?」
「ふーん」
「今さらだけど、大学名言おうか?やっと、シオリさんも少しは俺に興味を持ってくれるようになった?」
「いい。わざわざ言わなくて。それに興味とかそういう事じゃないから」
そう言ってしまった後、
「―…」
“あ……”と、思う。少し言い方が酷かった……と反省してしまう私。
“はぁ―…”
という溜め息が後ろから聞こえた。