キスマーク


目の前を通り過ぎたのは、ショートカットだけどお人形さんの様に可愛い顔をした女のコと、モデルみたいな背丈と人目を惹く、ほどよく甘いフェイスの男―…


多くの人たちが行き交う中でも一際、私の目を惹いた二人。


女のコのほうは全く知らない初めて見る顔だけど、ほどよく甘いフェイスの男は知ってる。


たった今、その男の名前が私の携帯電話に表示されている。



「ヒロ……?」



男を目で追いながら、思わず呟いてしまう名前。


通り過ぎただけでも見間違いはしない。ヒロだ。


そして、ショートカットの女のコが自分の腕をしっかりと男の腕に絡めて歩いているのも見間違いなんかじゃない。



何よ……



と、思う。



今夜、外で会おうなんて約束を取り付けたのはヒロのくせに、私と落ち合うまでは違う女とデートなの?


別の女と会っておいて、のこのこと私と食事をするつもり?



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