キスマーク
「詩織が良ければ今からどう?」
と、続ける一哉。
己の利益を優先した一哉が今さらどんな風に私に接してくるのか、少し見てみたい気持ちもある。
それとも“詫び”なんて言葉は建前で別の思惑があるのか―…
確かめてみたい気持ちが沸く。敢えて、一哉の誘いに乗ってみたい気持ち。それに、
“絶対だよ”
と言われたヒロとの約束があるけど、なぜか今は従いたくない気分で、タイミングの良い一哉からの連絡が私の気持ちを後押しする。
「いいよ。どこに行けばいい?」
一哉の誘いに乗る私。
「詩織はまだ会社?」
「ううん。さっき出たところ。まだ駅にも着いてない」
「じゃあ、20時に―…」
電話越しに一哉がこれから落ち合う場所を指定してくる。