キスマーク


お店がある階に着いたのは、ちょうど約束の時間の20時。


懐かしい場所。一哉との交際時代によく来たホテル。


このホテルで待ち合わせをするのは、殆どが金曜日。仕事を終えて待ち合わせ。そう、今日みたいに。


お酒を飲みながら食事をして、会話を愉しんで、ほろ酔いになった頃に一哉がリザーブしてくれたホテルの一室へ。



何度も過ごした甘く濃厚な夜。



今となっては元カレとの思い出―…



バーラウンジに入ると、カウンター席に座って既に水割りを飲んでいる一哉。私の姿に気付くと、「ここ」と左手を低く挙げた。



「悪かったね、急に金曜の夜に呼び出したりして」


「別に。大丈夫よ」


「食事まだだろ?ここでもいいけど和食か中華に移る?」


「ううん。ここでいい」



椅子を引き、一哉の隣りに座る私。



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