キスマーク
「お腹空いただろ?何でも好きなもの食べて」
「うん」
「飲み物は?」
「私もウィスキー水割りで」
つい付き合っている時の癖で一哉が飲んでいるものと同じお酒をオーダーしてしまう。
半年以上の空白があっても、あの頃のようなシチュエーションになれば自然と出てくるのか……
そして、久しぶりの乾杯。
何も言わずグラスを合わせる。
「この間は偶然だったね」
「そうね……」
「仕事はどう?秘書課所属のままだろ?」
「ええ。変わらずね。一哉は?」
「まぁこっちも変わらずだけど、春の人事でソーラー関係のビジネス事業部に移動して東南アジア中心に出張三昧かな」
「忙しそうね」
「まぁね」
同じ総合商社勤務だけど、一哉の勤める商社はもっと大きい。業務内容は違えども、会話をしていると刺激を受けることが多かった。