キスマーク



「で、歳は同じくらい?」


「いや、大学を出て去年入社したばかり」


「じゃあ、まだ若いのね」



そんな言葉のやりとりをしながら、縁故採用か、と思う。就職活動をして何十、何百社の入社試験を受けて、落ちて、なんて当たり前のご時世なのに羨ましい限り。


一哉の社での正当な評価までは分からないけど、部長からそんなお声がかかるんだから、きっと将来有望株な筈。


入社たばかりで、そんな彼氏までとんとん拍子で見つけて、ホント、羨ましい限り。



どんなコかなんて知らないけど、想像してしまうのは苦労知らずお嬢様―…



そんな勝手な想像と妬みに似た、だけども違う感情が黒い塊の中で蠢き出す。



「彼女は―…23歳だよ」


「へぇ」



やっぱりその位の年齢か、と思う。にじゅうさん―…



そこで、ふと、思い出してしまったのは、本来ならこの時間を一緒に過ごしていた筈の彼、ヒロのこと。




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