キスマーク
そこでまた、鞄の中の携帯を気にする私。
変わらず着信もメールもない。
その事が食事の誘いに乗った時の様に、“部屋で”という二つ目の誘いに乗る、後押しをしてくる。
アルコールが入れば少しは気分が楽になるかと思ったのに、疲れが溜まっているせいもあるのか、積もり積もっていくイライラ。
この状況全てが私に悪女の扉を開かせる。
そして、
一哉がリザーブしていた部屋に入ると、飲みなおしどころか、一哉は私に抱きついてキスをしてきた。
舌を絡める深いキスで私の唇を捕らえてくる。
「どうして―…今さら?」
一哉の唇がいったん離れたところで、そんな問いを投げかけてみる。
「彼女とすればいいのに」
男という生き物をわかりながらも、愚問だと思いつつも。敢えてそんな台詞を放つ。
「彼女ともしているよ。でも、」
「でも?」
「詩織とは凄く相性が良かったら、ね」
そう言うと、一哉はまたキスを始める。彼女とは別の女に触れるのが久しぶりだからなのか、半年以上ぶりに私に触れることへの興奮なのか―…そのキスは忙しく激しい。