キスマーク
私に突き飛ばされた身体が、ちょうどベッドの角に当たり、
「痛―…」
と、顔を歪ませる一哉。
「し、おり……?」
いきなりどうしたのか、と言いたげな表情で私を見る。そんな一哉を見下ろし、
「―…っ」
口を閉ざす私。
さっきまで私の心を覆い尽くそうとしていた黒い感情がサァーッと引いて行くのを感じる。
慌ててバッグを持ち、乱れた服のまま一哉に背を向けて部屋を出て―…ちょうど部屋のあった階に停まったエレベーターに逃げるように駆け込む。
一哉がリザーブしていた部屋から出るまでは、あっという間の出来事。
当の自分でさえ、一体何が私にそうさせたのか解からない。