キスマーク
夕方には違う女と一緒に居て、こんな時間になっても連絡が取れない、こんな状況で“まさか”なんて思うのはおかしいのかもしれない。
それでもなぜか、その“まさか”をこの瞳で確かめてみたい自分が居る―…
車道の近くに走り、辺りを見回す。
ちょうど良く見つけた空車のタクシー。
急いでそれに乗り込み、
「―…駅まで」
と、ヒロに指定された駅名を告げる。
ああ。
首筋が、胸元が、肌が―…寂しい。
“相変わらず、白い肌だね”
そう一哉から言われて、唇を押し付けられそうになった瞬間、嫌だ、と思った。
触れて欲しくない。
“彼”以外には―…と。
そんな風に思ってしまう自分自身を、どうかしてる、と思う。
だってこんなにも、今夜、彼に抱かれたいと望む私がいるから―…