キスマーク
ううん。今夜は、じゃないかもしれない。
もしかしたら、もうヒロと会うことはないのかもしない―…
そんな考えが私を襲う。
それは彼と出逢った時から何度も、何時か来る、何時か来ると思っていたこと。
ヒロが私に飽きて、新しい女に移り変わる瞬間。
その瞬間が今夜なのかもしれない、と―…
そう考えると、手が、足が、身体中が震え出す。
「ヒロ……っ」
震える声で彼の名前を呼ぶと、今にも涙が頬を伝わりそうになる。
「ヒロ―…!」
もう一度、声を震わせながら、叫ぶかのように彼の名前を口にした時だった。
「シオリさん」
そんな甘い声と共に、大きな腕が、私の身体を包んだ。