STEAL!!~大切なモノ盗みます~
「ちょっと待て。そこまで判ってんなら何で俺なんか雇う必要があんだよ?金で買い取りゃいい話なんじゃねーのか?」
「ですからあなたは……」
「相手が買い取りに応じてくれなかったのだよ。」

 疑問が口をついたユーリに答えたのはウィズを制したウォルフの言葉だった。

「幾ら積んでも相手が手放さなければどうしようもないだろう?」
「確かにな。」
「そう。だからこそ、無理にでも手に入れたいという訳なのさ。」

 そこまで一息に言い切ると、ウォルフはウィズに向かって手を挙げる。

 その仕草を見るとウィズはまた頭を垂れてウォルフの背後に周り、大きな鞄を持ち出してテーブルの上で開けた。

「500万リルある。契約金として納めておこう。成功した場合はこの10倍の金額を新たに支払わせて頂く事を誓う。」
「500万っ!?10倍!!?」

 突然現れた目の前の大金に驚きを隠せなかった。

 ユーリのような稼業の人間に仕事を依頼する場合、本来なら成功報酬のみが普通だ。失敗する可能性のある仕事に事前に金を払うなど有り得ない。

 だが目の前の男はそれをすると言っているのだ。

 信じられない。依頼内容は何の変哲もない皿の盗みで、しかも目的の物がある場所さえ判っているのだから。

 こんな簡単な仕事に破格の報酬はどう考えても怪しい。怪しいが、裏を返せばどんな事をしても手に入れたい物だという事だ。

「……判った。契約成立、だな。」

 ユーリはテーブルの上の紙と札束の山を交互に見ながらゆっくりと頷いた。

 依頼のリスクと報酬を比べても、やはり報酬の魅力には勝てない。

 何よりも、ウォルフがここまで執着する皿に興味が湧いてきた。

 やるとなったら完璧に。

 ユーリは不敵な笑みを浮かべながら詳細の書かれた紙をポケットに押し込んだ。



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